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離婚にまつわるコラム

私が妊娠した頃、旦那の浮気相手のお腹にも

もうすぐ30歳になる専業主婦です。2歳と6カ月になる男の子がいます。主人の浮気が原因で離婚をしました。慰謝料や養育費の件で、離婚調停までなったものの、半年前にやっとの思いで希望の慰謝料と養育費をもらい、正式離婚をすることができました。色々とあったものの、今はとっても安らいだ気持ちでいます。もちろん、主人のいない寂しさは多少ありますが、精神的に穏やかな日々を過ごしています。

 

私と主人は、同じ大学のサークルで知り合いました。主人は2年先輩です。

 

私たちは、友人も羨ましがるほど仲の良いカップルでした。主人は、私の卒業を待ってプロポーズをしてくれました。ただ、親の反対もあり、結婚したのは私が就職して3年後です。とても愛し合っていたので、結婚できる日が待ち遠しく、休みの日は必ず2人で過ごしていました。

 

でも、あの仲の良かった頃を思い出すと今でも信じられませんが、まさか主人の浮気が原因で離婚するとは……。

 

主人の職場は残業が多く、結婚前も平日の仕事帰りにデートするということはほとんどありませんでした。それでも、主人は会っている時はとても優しく、メールや電話もまめにくれていましたので、まさか私以外の人と付き合っているとは思ってもいませんでした。いわゆる“ふた股”です。

 

結婚前から私と同時進行で付き合っていた彼女がいましたし、その彼女と結婚後も関係が続いていたんです。本当に驚きました。すごくショックでした。

 

そのことに最初に気付いたのは、結婚して半年ほど経ったある日曜日でした。結婚当初も主人は時折早く帰宅することはあったものの、独身時代からいつも仕事が忙しいと言っていたので、私はそのウソをすっかり信じていました。まさか、平日はほぼ毎日、その彼女と会っていたとは思ってもいませんでした。普段は、休みの日は一緒にショッピングに出かけたり、映画を見に行くこともありましたし、他の旦那さんたちに比べれば、私を喜ばせようとして疲れた顔も見せず、私の用事に付き合ってくれていました。

 

ところが、結婚して半年ほど経ったある日曜日のこと。主人は珍しく疲れているからと言って、朝からゴロゴロしてテレビを見ていました。私は相当疲れているのだと思い、その日は私の実家に行く約束をしていたものの、一人で実家に行くことにしました。

 

「一緒に行けなくてごめん。久し振りなんだから、ゆっくりしておいで」

 

身支度を整えている私に向かってそう言う主人の言葉に甘え、私は実家に泊まって来るつもりで家を出ました。その時は、主人の言葉に「こんなに優しい人と結婚できて幸せだわ」と思ったくらいです。

 

ところが、実家に行き母と話をしたり一緒に食事の支度をしたりしていると、母の親友より電話があり、母は急に出掛けることになってしまったのです。私は母と一緒に実家を後にして電車に乗りました。しかし、時間も早かったので、そのまま友人と待ち合わせをして会うことにしました。かなり早く待ち合わせの場所に着いた私は、窓側の席に座り紅茶を頼みました。友人が来るまで、紅茶を飲みながら外の景色をぼんらやりと眺めていました。すると突然、信じられないような光景が目に飛び込んできました。

 

疲れて家でゴロゴロしているはずの主人が、見知らぬ女性と仲良く腕を組んで通り過ぎて行ったのです。私は自分の目を疑いました。カフェから飛び出し、主人の後姿を追いかけました。遠くに見える主人。後姿でしたが、着ていた洋服は主人の持っているものと同じでした。私はぼーっとしたまま、友人と待ち合わせをしていたカフェに戻りました。それからどのくらいの時間が経ったのかも覚えていません。友人が現れ、ぼーっとしている私を見て心配し、あれこれと聞いてきました。私は思わず、今、目の前で見た光景を話しました。

 

すると友人に、こう言われました。

 

「○○さんって爽やかな感じだし、女性にもモテそうだものね。それに、○○さんの職場ってサービス業でしょ?女性が多い職

場だとしたら、浮気の相手には困らないんじゃない?」

 

その後、友人とどんな話をしたかも覚えていません。頭は真っ白なまま家に帰りました。

 

まだ子どもも生まれていなかったので、私は帰宅すると一人でぼんやりとリビングに座っていました。何時間くらいしたのか、玄関のドアが開き主人が入ってきました。部屋は電気もつけていなかったので、主人は私が帰ってないと思ったらしく、リビングでぼんやりと座る私を見て驚きました。

 

「早かったんだね。電気もつけずに、実家で何かあったのか?」

 

さすがに主人も私の様子を変に思ったものの、自分が浮気をしていた後ろめたさがあったのでしょう。当たらず障らずという態度でした。

 

結局、それから2~3日後、私は浮気の現場を目撃したことを黙っているのが耐えられなくなり、主人に見たままを告げました。すると主人は、あっさりと認め、2度と彼女に会わないと約束をしてくれました。

 

それから半年もすると私の妊娠が分かり、主人もとても喜んでくれ、そんな主人の喜ぶ顔を見て浮気のことなどすっかり忘れてしまいました。

 

ところが、第1子も生まれ育児にバタバタ追われていたある日、またもや主人の浮気を知ることになりました。しかも、その相手はもう2度と会わないと約束した、あの時の女性でした。

 

私は育児に疲れていたこともあり、感情的になって主人を責め立てました。

 

最初はひたすら謝っていた主人でしたが、しまいには「お前や子どもの為にちゃんと働いて給料も入れてるんだ。何の文句がある!」と逆ギレです。その言葉に私もカッとなり、つい「離婚してやる!」という言葉が先に出てしまいました。しかし、この時点では離婚まで考えていなかったので、すぐに主人に謝りました。すると主人も「俺が悪かったんだ。彼女とは別れるよう話をするよ」と言ってくれたのです。

 

それ以降、主人は平日に外泊する日が多くなりました。ほとんどは「仕事のトラブルで今日は帰れないかも」「残業で遅くなったからカプセルホテルに泊まる」と一方的なメールを寄こすだけです。でも、私の中では主人をまだ愛していましたし、子どももいましたので、以前のような口論になり、本当に離婚になったらどうしようと思い、外泊が多くなった理由を追及できませんでした。

 

主人を信じたいのに信じられない自分に苛立ちを覚え、なんとか信じられる方法をと思い、私立探偵に主人の素行調査をお願いしました。外泊の理由は、本当に仕事のトラブルだと信じたかったからです。でも、結果はやはり彼女との浮気でした。最初の浮気を知ってから、2年が経っていました。こんなに何度も騙され続け、私の主人を信じたいという気持ちは音を立てて崩れていきました。

 

これからも騙され続けるのはイヤ!

 

そんな気持ちから、今度は真剣に離婚を考えるようになりました。しかし、そんなときに限って2人目を妊娠していることがわかりました。

 

妊娠したことを告げようにも、主人は帰ってこない日が多く、妊娠が判明してから2週間後、ようやく主人に話をしました。しかし喜ぶ顔も見せず、挙句の果てに「誰の子だ?」と聞かれました。私は言葉を失いました。泣きそうになりましたが、主人に涙を見せるのが悔しく寝室に行って泣きました。

 

1時間ほど泣いていたでしょうか。泣くのにも疲れ、ベッドに横になり天井を見つめていました。頭の中には、離婚後の自分の姿が映し出されていました。一間のおんぼろアパートで暮らす私と子ども。ベビーベッドもなく、大人用の布団に寝かされている赤ん坊。幼稚園に通わせるお金もなく、近所の子からは父親がいないことでいじめにあう長男。

 

私はそんなことをイメージすると、幼い子を抱え、離婚後、どうやって生活をしていったらいいのか不安でたまりませんでした。仕事を探すといっても、子どもを保育園に預けなくてはならないし、その頃には、実家の母も体調を崩していたので、子どものことで迷惑をかけるわけにもいきませんでした。それに、私自身、幼い頃から両親が働いていたため、子どもの頃に寂しい思いをして育ちました。だから自分の子には寂しい思いをさせたくないという思いがありました。

 

「離婚をしても、私ひとりで本当にやっていけるのか?」

 

そんな不安で眠れない日が多くなりました。そんなある日、主人のほうから離婚を言い出してきたのです。「とにかく離婚してほしい」の1点張りです。それでも私が離婚の理由をしつこく聞くと、相手の女性が妊娠したから別れてほしいと言うのです。すでに彼女と住むためにマンションの借りたと言われ、私は主人の身勝手さに腹が立ちました。

 

ずっと私を騙しておきながら、私も主人との2人目の子を妊娠しているのに、浮気相手に子どもができたから別れてほしいなんて身勝手すぎます。しかもまだ離婚が決まったわけでもないのに、すでに相手の女性と産まれてくる子どもと3人で住むためのマンションまで借りているなんて……。

 

この時、初めて「養育費だけでなく、慰謝料もしっかりと取って離婚してやる!」と心の底から思いました。それでも、すんなり離婚に合意したら、慰謝料もあまりもらえないだろうと思い、主人が何度も離婚の話し合いをしようとしても応じませんでした。

 

すると今度はまた夫が逆ギレ状態になりました。

 

「お前がそんなに頑固に拒否するなら、俺にだって覚悟があるぞ。俺の都合で離婚するんだから、お前が素直に応じてくれたら、それなりの慰謝料と養育費は払うつもりでいたけど、もう1円だって払ってやるか!」

 

そう捨てゼリフを吐いて出て行ってしまったのです。私は呆気にとられました。「慰謝料はまだしも養育費も払わないってどういうこと?」

 

頭の中で同じセリフが何度も浮かんでは消え、消えては浮かんできました。

 

それから主人は、ほとんど家に帰って来なくなりました。挙句の果てに、お給料も渡してくれません。私は幼い子どもを抱え、お腹には2人目の子を宿し途方に暮れてしまいました。

 

仕方なく、子どもが小学校に上がったら新築マンションを購入しようと始めた定期預金を下ろすしかないと通帳を見たところ、すでに定期は解約されていました。解約日は主人が出て行った日になっています。もう言葉になりませんでした。お給料も入れず、マンションを購入するために貯めていた定期預金まで勝手に解約してしまうなんて、いくら私に腹を立てているとはいえ、子どものことはどう考えているのでしょう・・・。

 

定期預金は、私の独身時代に貯めたお金も入っていましたので、300万円ありました。そのお金がそっくり、浮気相手と新生活を始めるための費用に使われてしまったかと思うと、憎しみさえ湧いてきました。

 

こうなったら浮気相手からも慰謝料をとってやりたいと思うようになりました。また定期預金に関しても、半分は私にももらう権利があるはずです。とは言え、一人であれこれ考えていても、何をどうすればいいのか分からず、時間だけが過ぎていきます。家賃や車のローンなど、毎月の支払は15万円ほどありました。普通口座に残っているのは100万円ほどです。このままでは5カ月で底をつきます。子どもと三人、路頭に迷ってしまいます。

 

両親に相談したくとも、体調を悪くしていた母親が完全に寝込んでしまっていたため、心配させるのも申し訳なく黙っていました。でも、ひとりで考えるには荷が重く、離婚を経験している友人に事の成り行きを話すことにしました。友人は結婚前に働いていた職場の同僚でもありました。結婚式にも出席してくれ、新婚家庭にも2度ほど遊びに来てくれたこともあり、主人とも話をしたことがあります。

 

約束の日、友人は私の家に遊びに来てくれました。すでに主人は彼女と一緒に暮らしていますので、帰ってくる心配はなかったからです。

 

友人には、主人が浮気をしていたこと。その浮気相手が、私と知り合う前からの付き合いで、結婚後もその関係が続いていたこと。そして、その彼女が妊娠し、主人は今、家を出て彼女と一緒に暮らし始めていること。私はワラをもすがる気持ちで、これまでの経緯を包み隠さず友人に話しました。

 

友人はひととおり私の話を聞くと、「とりあえず、弁護士とか法律の専門家に相談したほうがいいよ。自分で解決しようとしても泣き寝入りしかねないよ」と言いました。友人はまだ独身で結婚の経験もなく、子どもも当然いませんでしたので、細かいアドバイスはできないけど、と言っていましたが、身重の私のことも心配してくれました。

 

友人が帰ると、私はとりあえずインターネットで離婚問題を多く扱っている弁護士事務所を探しました。弁護士にも得意分野があるから、離婚を専門に扱っている事務所がいいよと友人が教えてくれたからです。

 

弁護士さんとお話をするのも初めてのことだったのでとても不安でした。何をどう話せばいいのか、どこまで相談すべきなのか、費用はいくらくらいかかるのか……。頭の中にクエスチョンマークがいっぱい飛び交いました。でも、とりあえず探さなくちゃと思い、小さな子どもを抱えていましたので、家から比較的近いところにある事務所で、離婚を多く手掛けているところを選ぶことにしました。

 

「自分ひとりで考えていてもラチがあかないぞ!」と自分に言い聞かせ、不安な気持ちを抑え、ドキドキしながら電話をしてみました。すると、とてもやさしそうな感じの男性の弁護士さんが対応してくれました。私は簡単に経緯を説明しました。離婚を言い渡され、すでに主人は家を出て浮気相手と暮らし始め、現在彼女が妊娠中であることを伝えました。また、私自身も2人目の子どもを妊娠中だということも伝えました。

 

先生からは、「奥さんは離婚をする意志がおありですか?」と聞かれました。

 

「離婚はしたくありませんが、主人がこのまま帰ってこないのなら離婚しかないと思っています」と告げると、「では、とりあえず1度事務所においでください。詳しいお話をお伺いした上で、これからどうしていけば良いのかを一緒に考えていきましょう」と言われました。

 

その日は、訪問する日を決め電話を切りました。私と子どもたちの将来のためにも、しっかりと要求しなければダメだと念を押されました。「本当に大丈夫だろうか?」と不安はありましたが、「一緒に考えていきましょう」との先生のひと言に励まされ、思い切って相談に行く日を決めたのです。

 

約束の日、30分ほど早く弁護士事務所のある駅に到着しました。早すぎたので近くのカフェに入ろうかとも思ったのですが、何だか落ち着かず事務所に直行してしまいました。受付の女性はとてもやさしそうな雰囲気で、「14時からのお約束なんですが、早くに到着してしまって」と告げるとニッコリと微笑み、「大丈夫ですよ。先生はまだご相談中ですので、そちらにお掛けになってお待ちください」と言いお茶を運んできてくれました。

 

しばらくして部屋に案内されると、5分ほどして先生が入ってきました。電話でお話ししたときの印象のとおり、やさしい雰囲気の方でした。初回の相談は1時間ほどで、私はこれまでの経緯を詳しく説明しました。

 

私は前の日に、これまでの経緯を走り書きでしたがメモにしていました。相談当日、上手に説明できるか心配があったことと、言い忘れたりしてはいけないと思ったからです。

 

・相手の女性とは、私と知り合う以前から付き合っていた

・主人と知り合った際に、その女性の存在を知らされていなかった

・結婚を前提に付き合い始めてからも、その女性の話は聞かされなかった

・結婚後もその女性とは付き合っていた

・残業と称して平日は終電で帰ることが多かったが、ほとんどがその女性と会っていた

・結婚して半年後、偶然、街で浮気相手と腕を組んで歩いているのを目撃し、浮気を問いただすとあっさりと認め、2度と会わないことを約束した

・第1子出産後、再び浮気がバレ、以後、平日の外泊が多くなった

・私立探偵に素行調査を依頼し、例の彼女との浮気が続いていたことが判明

・浮気相手の妊娠が発覚し夫から離婚を言い出された当日、口論となり夫は家を出てしまった

・主人が家を出る際、将来マンションを購入用の定期預金を黙って解約されてしまった

・家を出てからはお給料を入れてもらっていない

 

そして私はメモと一緒に、私立探偵に素行調査を依頼した際の浮気の現場写真などの報告書も持参しました。また、主人が浮気を続けているかが知りたく、内緒で主人の携帯履歴をメモした紙や彼女とのメールのやり取りの画面を写した画像、主人名義のクレジットカードの利用明細のコピーなども持参しました。

 

ただ、ひとつ私が気になっていのは、こうした私の行為が罪にならないかということでした。主人の財布やカバンにホテルなどの領収書が残っていないかを確認するため、内緒で探したりもしました。いくら主人が浮気をしていると確信していても、このような行為は罪になるのではという不安がありました。

 

そのことも先生に相談しました。すると、先生からは「罪にはなりませんから安心してください」と言われホッと一息つきました。パートナーが一方的に相手の浮気を疑っている場合は別だそうですが、私のようにすでに浮気を認めている事実があり、会わないと約束しながら隠れて会っている以上、携帯などを見られても人権侵害には当たらないと言われました。

 

慰謝料についても、「結婚前から続いている関係を隠し、結婚後も浮気をしていただけでも離婚の原因になりますので、慰謝料は相当額を請求できるでしょうし、ご主人が勝手に解約してしまった定期預金についても、離婚が決まればきちんと精算してもらうことは可能だと思います」と説明してくださいました。

 

ただ先生には「本当に離婚をする気なんですよね?」と何度も確認をされました。私の受け答えの中に、どこか未練のようなものを感じたのでしょう。確かに、先生にこれまでの経緯を話している間も、主人との楽しかった日々を思い出すことが多く、そのたびに、「もう一度、あの頃の生活に戻ることはできないのか?」と心の中で叫んでいたからです。それが先生に伝わったのだと思います。

 

先生には、相手とこじれた場合、正式に離婚するまでにはかなりの時間を要することもあるので覚悟はしておいてくださいと言われました。慰謝料のこと、養育費のこと、主人が勝手に解約した定期預金のこと以外にも、これまで住んでいたマンションにある電化製品からお皿のひとつまで、夫婦の共有財産となるので、分配方法についても決めていかなければならないのだそうです。

 

実は、第1子が生まれた直後、主人が別れると言っていた女性との関係を続けていると知ったとき、私は主人に内緒でその女性と会って話をしました。主人が結婚をしたことを知っているのか、子どもが生まれてまでも愛人関係を続けることに罪の意識はないのか、今後も続けていく気なのかなどを直接問いただしたかったからです。

 

彼女の答えは、主人が結婚したことを知らされていなかったというものでした。むしろ、彼女との結婚を約束していたというのです。ただ、彼女と出会う前に結婚を約束したフィアンセがいて、そのフィアンセ(私のことです)に別れ話をしたところ、「絶対に婚約は解消しない」と言われているので、フィアンセとの婚約が解消できるまで待ってほしいと言われていたというのです。

 

しかし、素行調査を頼んだ際、主人と知り合った日を照らし合わせてみると、やはり私と付き合い始めたほうが遅いのですから、彼女のいう「フィアンセ」は私のことではありません。

 

しかし、主人が結婚しているのを知っていたら付き合っていなかった、私に対して申し訳ありませんと涙を浮かべながら言う彼女の態度からは、まんざら嘘でもないように感じたので、彼女も主人に騙されている被害者のように感じたほどでした。状況から考え、その彼女が主人と付き合い始めてから8年は経っています。直接会った頃はまだそのような彼女の言い訳にも納得できたものの、私と結婚している事実を知った後も、結局は彼女も不倫を承知で主人との関係を続けていたということです。

 

私は、そのことを考えているうちに、次第に彼女に対しても憎しみが湧いてきました。とはいえ、主人が結婚したことを隠してずるずると不倫関係を続けたことを思うと、不倫相手にも慰謝料を請求することができるのだろうかが心配でした。

 

その旨を弁護士の先生に話すと、「ご主人の場合、奥様と結婚する前から付き合っていた女性と、結婚後もその事実を隠して付き合っているのですから、民法では不貞行為とみなされ、相手に慰謝料を請求することができます」と答えてくれました。

 

でも、よく考えてみると、主人が家を出てからは、携帯にはまったく出てくれないため、直接会社に電話をしても、電話に出た方から「今、手が離せないとのことで、一段落したら連絡するのでとの伝言です」と言われ、結局は主人から電話をしてくることはありませんでした。

 

まさか、電話に出た方に事情をお話しするわけにもいかず、何度か電話をしたものの、それきりになっていました。仕方なく、友人から電話をしてもらいましたが、回答は同じでした。

 

あまり強引に連絡を取って、主人の仕事に影響があっては思うと、それもできない状態です。もしも、主人が一切の連絡に応じてくれない場合、やはり泣き寝入りになるのかが心配でした。

 

すると先生は、浮気相手は主人が結婚していた事実を私の口から直接聞いたにも関わらず、その後も不倫関係を続けていたこと、そしてそれが離婚の原因になったことに対しては、主人だけでなく不倫相手にも慰謝料を請求することができる。また、主人が支払わない場合、主人の分を不倫相手に代わりに払ってもらうことも可能だと説明してくれました。法律では、浮気をした夫と不倫相手は、双方に連帯して賠償金を支払う責任が発生するそうです。

 

私は先生と相談し、300万円あった定期預金の半分の150万円を返してもらうことと、慰謝料として主人と浮気相手にそれぞれ200万円払ってもらうこと、子ども2人の養育費として月に10万円を支払うよう請求することに決めました。

 

子どもがいるのに給料もよこさず定期預金も勝手に解約してしまうような主人です。あまり高く請求をすれば逆ギレして拒絶反応を示すのでは? と考えたのですが、主人にさんざん裏切られたわけですし、先生にも2人の子どもを抱え今後の生活設計を考えれば、まずは慰謝料としてそれぞれに200万円の請求をしたほうがいいだろうというアドバイスをもらいました。

 

それに、通常、慰謝料を高く払うのには抵抗があっても、子どもが可愛ければ養育費という名目でなら払う男性も多いと言います。しかし、主人の場合、子どものことなど考えていないことが手に取るように分かっていたので、長期の支払いになる養育費だと払わなくなる可能性も高いと言われました。

 

確かにそうだなと思いました。先生とお話をしていて、私は離婚でもめた友人の話を思い出していました。

 

結婚6年。3人の小さな子どもを抱えて離婚した友人S子。離婚の理由は、やはりご主人の浮気でした。年子で3人を産んだS子が、2人目妊娠中の浮気です。しかも、上の子がまだ小さく手がかかるため、出産を挟んで3カ月ほど実家に戻っていたS子。その3カ月、ご主人は自宅に愛人を連れ込んで生活していたそうです。

 

ご主人は、浮気を認めたものの、浮気した相手と別れる気はないし、その人と別れたとしても他の人と浮気をしないとは約束できないと言い放ったそうです。

 

S子も最初は2度と浮気はしないと約束してくれれば許してもいいと思っていたそうです。上の子どもの母乳が離れた途端の妊娠だったため、S子もご主人のことをあまりかまってあげることができず、夜の相手も数カ月に1度だったと言います。男の性欲を考えれば仕方がないと割り切ろうと思ったそうです。

 

しかし、浮気はやめないと豪語され、しかも自分が実家へ出産のために帰っているときに、家に不倫相手を連れ込むような夫に、今後もどんな仕打ちをされるかを想像しただけで身の毛がよだつ思いがしたと言います。

 

S子は幼い3人の子育てをしながら、一向に浮気をやめようとしないご主人に対し、ついに堪忍袋の緒が切れて離婚を言い出したそうです。

 

すると今度は、ご主人は離婚するなら子どもは自分が育てるからS子には渡さないと言い出したそうです。これにはS子も驚いたと言います。仕方なく弁護士さんに頼み交渉をしてもらうと、なぜか話し合いはスムーズに行き、慰謝料はなしとして養育費を毎月30万円払うということで言い出したそうです。

 

S子も短大を卒業後、すぐに結婚をしてしまったため働いた経験がなく、小さな子どもを抱えて母子家庭になることへの不安があります。でも、養育費として30万円をもらえれば、子どもが小学校に上がるまでは働かなくともそばにいてあげられると思い合意したそうです。

 

しかし、ふたを開けてみると、最初の3カ月は30万円を送ってきたそうです。しかし、4回目の慰謝料は翌月になっても振り込まれず、仕方なくS子がご主人の会社に連絡をすると、交通事故を起こしてお金が必要になったから1カ月待ってほしいと言われたとのこと。

 

S子も人がいいなと思いますが、これは人のことになるとそう思えるのですね。しかし、翌月になっても養育費は振り込まれてきませんでした。仕方なくまた会社に連絡をすると、保険が下りたらすぐに振り込むと言われたそうです。しかし、結局は翌々月になっても振り込まれません。

 

仕方なく、弁護士さんに連絡をして間に入ってもらったところ、その月の末に振り込んできました。その後も遅れることが多く、結局、協議離婚が成立してから1年間の間に振り込まれた養育費は7カ月分だけ。結局、翌年からはぱったりと振り込まれなくなってしまいました。

 

S子は意を決して探偵を雇ったそうです。すると、すでに浮気相手と暮らし始めており、浮気相手には3カ月になる赤ん坊もいたことが判明しました。

 

赤ん坊を抱っこする主人と、隣で腕を組んで嬉しそうに笑いながら買い物をしている写真を探偵の人から見せてもらったS子は、それまでに見たこともないようなやさしそうなご主人の顔を見て、これ以上、養育費を追及するのはやめようと思ったそうです。

 

その話をS子から聞き、私も主人が浮気相手との子を抱いて、しかも幸せそうな顔をしていたら、やはりその子どものことを考えると、きっと私の性格からも、それ以上請求できなくなるだろうなと思いました。

 

ですので、先生からの提案に素直に従いました。先生からすれば、私が希望する額より下げたものの、それでも良いほうだと思っていたと後から聞きました。主人は営業畑で給料もそれなりにもらっていたため、確実な数字を提示することで要求する金額をもらうことができると考えていたそうです。

 

実際、主人は30代前半で年収が800万円ほどありました。彼女も同じ会社で経理を担当しているため、それなりの年収があると聞いています。ならば、養育費を高く設定するよりも、最初に300万円の慰謝料をとっても払えるだけの余裕はあるだろうと判断してのことでした。

 

とりあえず、離婚を前提に主人と話し合いをしようと会社に連絡をしました。S子のご主人と同じように居留守を使われるのでは?と思っていましたが、以外にもすんなりと電話に出ました。

 

離婚を前提に話し合いたいと告げると、これまた意外にもすんなりと待ち合わせの日時と場所を指定してきました。主人は電話をした3日後、会社の近くのカフェで待ち合わせをしようと言いました。私は指定された日に、指定のカフェに向かいました。約束の時間より10分早く着き、カフェに入ると窓際の席にすでに主人が座っていました。私の顔を見ると、片手を上げにっこりと笑いかけています。3カ月ぶりに主人の顔を見て、しかも結婚前の恋愛期間のときに見たような笑顔に私はかなり動揺し、思わず涙があふれてしまったのです。

 

席に着くなり、主人はテーブルに白い分厚い封筒を置きました。

 

「この中に300万円入ってる。家を出るときに解約した定期の300万円だよ」

 

慰謝料の話をしてやると息巻いてきたのに、何だか出ばなをくじかれた感じです。あまりに予想外のことで頭の中が真っ白になってしまいました。

 

「今、ひとりなの?」

 

そんなことを聞くのが精いっぱいでした。

 

「家を出て、例の彼女と住んでるよ」と主人が答えましたが、主人も気まずいらしく、沈黙がしばらく流れていたように思います。

 

「この300万円、どういう意味のお金だと思えばいいの?」と切り出すと、「君への慰謝料だと思ってもらえれば」と主人は答えました。

 

弁護士の先生から、こう言われたらこう答えたほうがいいですよといろいろとアドバイスしていただいたものの、そんなことはすべて吹っ飛んだ感じです。

 

「でも、これはあなたが勝手に解約した定期のお金でしょ? 慰謝料は別なんじゃないの?」

 

私の語気は、少し強くなっていました。しかし、主人は顔色ひとつ変えずに黙っていました。何か言いたそうな雰囲気でしたが、また沈黙が続きました。

 

「3カ月後には彼女に子どもが産まれるんだ」と主人が言いにくそうな口調で話し始めました。主人の言葉に私は耳を疑いました。唖然として言葉も出ませんでした。「3カ月、3カ月、3カ月・・・」「産まれる、産まれる、産まれる・・・」と、この2つの言葉がぐるぐると走馬灯のように頭を駆け巡っています。

 

確かに主人から離婚を切り出されたとき、彼女が妊娠していることを主人の口から告げられていたのです。「そっか、そうだった」と自分自身を納得させました。

 

「子どもが産まれるまでに彼女と籍を入れたいんだ。父親のいない子にはできないし。だから正式に離婚をしてくれ」

 

主人の言葉が私の琴線に触れました。「父親のいない子にはできない」とは、私にとってなんと残酷な言葉でしょう。私のお腹にも主人との2人目の子どもが宿っているのです。離婚をすれば、この子は父親のいない子になってしまうのです。それなのに、浮気相手との間にできた子どものことだけを気にするなんて、なんというひどい人だと怒りがこみ上げてきました。

 

私は、この主人の言葉に正気を取り戻しました。

 

3カ月ぶりに会う主人。久し振りに会う主人は、恋愛中のようにやさしかったため、ついつい慰謝料や養育費の話をするのをためらっていた自分に喝を入れ、2人の子の母親として、しっかりと伝えるべきことを伝えました。

 

・300万円あった定期預金の半分の150万円を返すこと

・慰謝料として主人と浮気相手に200万円ずつ払ってもらうこと

・子ども2人の養育費として月に10万円は成人するまで払うこと

 

以上の3つを約束するなら、相手の子どもが産まれる前に正式に離婚することを約束すると伝えました。

 

この時点では、うっかりして主人が差し出した300万円を受け取ってしまうところでした。先生から浮気相手からも慰謝料をもらうのであれば、相手に慰謝料を請求する前に、主人からは請求する慰謝料の全額を受け取ることのないようにと言われていたのです。この主人のひと言がなければ、うっかりと300万円を受け取ってしまっていました。

 

3つの約束をきちんと文書にしてくれるまでは、300万円は受け取れないことを主人に告げました。そして、300万円が入った封筒を主人の前に置きなおしました。

 

主人はしばらく考え込んでいました。そして、2~3日考えさせてほしいと言うと席を立ちました。浮気相手も今は仕事をしているが、子どもが産まれれば1年間は産休を取りたいので、余分なお金はないと言うのです。

 

私はカフェを出ると、先生の事務所に電話を入れました。主人との話の内容をそのまま伝えました。すると、この段階でいきなり内容証明郵便を送ると相手の感情を刺激する可能性があると言われました。なので、主人の返事により内容証明郵便を送ったほうがいいのか、それとも誓約書にするべきかを決めましょうと言われました。

 

先生の説明によれば、内容証明郵便は裁判上の証拠としての価値があるとのこと。ですので、主人が誠意のある対応をしてくれない場合は、その先の裁判も考えた上で内容証明郵便を送るようにしましょうと言ってくれました。それは、できれば事を荒立てたくないという私の気持ちを配慮してくれてのこと。もめれば子どもたちにも良い影響があるわけがないと私が考えたからです。

 

本来ならば離婚はしたくありません。しかし、浮気相手が妊娠までして、その子どものために私との離婚を切り出してきた主人です。憎んでも当然ですし、憎んでいる部分もあります。それでも、やはりまだ、この時点までは愛情が残っていたのです。ですので、主人から「許してくれ。やり直したい」と言われれば、もう一度やり直したいと思っていました。

 

ところが、この日の主人の言葉に、私の心も離婚へと固まりました。主人がもう帰ってくる気がないのなら、いつまでも待っていても仕方のないこと。どうせ帰ってこないのなら、1日でも早く気持ちを切り替えて、私も子どもと3人で新たな生活をスタートしたいと心から思えました。

 

ただ、子どもの将来を考えれば、少しでも多くのお金を手にしたいと思いました。私が妻として至らないから主人が浮気をしたわけではなく、結婚前に付き合っていた人と、結婚後も関係を続けていたわけです。もちろん、100%私に非がなかったとは言いません。でも、主人のやり方は完全なる裏切りだと思っています。

 

私は結婚後も子どもができるまでは働くことを希望しました。しかし、主人は妻には家にいてほしいという希望があり、主人のために仕事を辞め専業主婦になりました。

 

主人はほぼ毎日帰宅が遅かったため、子どもができるまでは時間を持て余すことも多く、寂しい思いもしました。まさか、私が寂しい思いをしている時間も、主人は浮気相手と楽しい時間を過ごしているなんて想像もしませんでした。残業で遅いとばかり思っていたので、帰宅後は食事ができるよう念のため毎晩夕食の支度をし、寝ないで待っていましたが、主人が家で夕食を食べることはほとんどありませんでした。

 

そうです。主人は毎日彼女と会ってセックスをしていたのですから、今思えば、私とのセックスが月に1度あるかないかだったのも不思議ではありません。私はてっきり疲れているのだとばかり思っていました。それでも2人の子どもにも恵まれ、私は主人の仕事がうまくいくよう家事に勤しみました。自分で言うのも変ですが、人よりもかなり妻として主婦としてがんばったと思います。

 

ですので、主人が戻ってくる可能性がゼロだということが分かれば、そして主人から浮気相手との間にできた子どものために離婚してほしいと言われたのですから、私は私の子どもたちのためにしっかりと慰謝料や養育費を請求してやろうとさえ思いました。

 

子どもが小さいため、できれば保育園に預けて働くよりも、友人のS子と同じく、せめて小学校に上がるまではそばにいてあげたいと思っていました。ですので、母子家庭の手続きをし、主人から養育費をもらえば、贅沢はできませんがなんとかその中でやりくりができるはずです。そんな風に自分の気持ちが固まってくると、主人が慰謝料と養育費をきちんと払ってくれるのであれば、主人が望むとおり、すぐにでも離婚してもいいという気持ちに変わっていきました。

 

しかし、私はこのときに大切なことの取り決めをするのを忘れていました。それは親権についてです。主人は今度産まれてくる彼女との間の子どものことでいっぱいでした。なので、私の中ではまさか主人が親権のことを持ち出すなんて想像もしていませんでした。

 

主人には彼女との間に子どもが産まれるのです。私との間の子どものことなど頭に入っていません。現に、この時点では、「子どもはどちらが育てるの?」などといった会話は1度もありませんでした。

 

それに、私が子どもを育てるつもりでいましたから、当然、親権も私が持つべきだと考えていました。子どもが小さいから母親が必要だということもありますが、離婚の原因が主人の浮気なのです。主人が子どもを育てるなんて考えられません。また、裁判になったとしても親権は母親である私に認められるだろうと先生も言っていました。ですので、その点については心配はしていなかったのです。

 

ところが、主人と会って3日後、彼女から怒りの電話がありました。

 

「浮気をした本人が慰謝料を払うのはわかるけど、結婚していたのを隠されていたんだから、私だって被害者なのよ。なぜ、私まで200万円も慰謝料を払う必要があるの」と言われました。

 

電話口の向こうでわなわなと震えているのが、はっきりと分かりました。以前、一度だけ会ったことがあり、その時とはまったく違った雰囲気でした。主人とはすでに一緒に住んでいますし、お腹には主人の子どもがいることで強気になったのかもしれません。

 

私は、離婚については弁護士に一任していることを彼女に告げました。すると、彼女はいきなりガチャっと電話を切ってしまいました。すると1時間ほどして、今度は主人から電話がありました。「もしもし」という声が、前回と違い荒々しくなっていました。女の直感で彼女に何か言われたんだと思いました。

 

「俺は、お前と知り合う前から彼女と付き合っていたんだ。でも、お前と知り合って、お前が結婚してほしいっていうし、お前の両親にも無理やり会わされて、強引に結婚されられたようなもんだ。彼女にはその時点で責められたよ。自分のほうが先に知り合っていたし、結婚の約束までしていたのにって、裏切者扱いされたよ。つまり、彼女はお前に俺を奪われたわけさ。彼女のほうが被害者なのに、どうしてお前に慰謝料を払わなくちゃいけないんだ?お前のほうが彼女に慰謝料を払うべきだろう?」

 

私は、主人のこの言葉に唖然となりました。私こそ、彼女と同時進行で付き合っていたことなど、結婚して半年も経って初めて知ったのです。主人の変貌ぶりに動揺はしたものの、冷静さを保つ努力をしました。「すべて弁護士の先生に任せてあるから」とだけ告げて、今度は私のほうから電話を切りました。

 

それから、毎晩、夜中の2時頃になると無言電話がかかるようになりました。最初の頃は、母の具合が悪くなったのではと思い、電話に出ていました。でも3日続けてかかってきて、これは主人か彼女のどちらかの仕業だろうと思い、それからは電話に出ないようにしました。

 

先生にそのことを話しました。嫌がらせが始まったのであれば、離婚調停にしましょうかとも聞かれましたが、できれば協議離婚ということにしたい旨も再度伝えました。そこで先生が私の代理人として、離婚条件などにつき主人と直接会って協議したいので、希望の日時を連絡してほしい旨の書面を送ってくれました。

 

しかし、主人からは1週間経ってもなんら連絡が来ませんでした。仕方なく先生が主人の携帯に何度も連絡をし、「話し合いの場を設けたいので連絡をください」とメッセージを入れても音沙汰なしです。すると主人から内容証明郵便が届きました。

 

「元妻には慰謝料として300万円を渡そうとしたが拒否されたばかりでなく、現在の妻にも慰謝料を要求してきました。結婚生活ではお給料も全額渡していましたし、仕事が忙しく平日は帰宅が遅い日が多かったものの、休日には家族で出かけたりと夫として父親として努力もしてきました。経済的にも精神的にも何ら不自由をさせた覚えはありません。浮気をする者が一方的に悪いとされますが、浮気をされるほうにも何らかの原因があるはずです。よってこれ以上、話し合う気はありません。慰謝料については、離婚届けと引き換えならば300万円は払いますので、再度ご検討ください」

 

まだ正式に離婚をしていない私を、すでに「元妻」と呼び、私と子どもたちから主人を奪った浮気相手を「現在の妻」と表現していることに無性に腹が立ちました。仕方なく、主人に伝えてある以下のようなこちらの要求を内容証明郵便で送ることにしました。

 

・300万円あった定期預金の半分の150万円を返すこと

・慰謝料として主人と浮気相手に200万円ずつ払ってもらうこと

・子ども2人の養育費として月に10万円は成人するまで払うこと

 

この金額は決して安くはありませんでしたが、これまでの経緯を考えれば、高いともいえない金額だと先生に言われました。相手との間に子どもが生まれることを考慮し妥協した金額です。

 

書面の最後に、合意の目途が立たなければ、離婚調整の申し立てをすることも添えられていました。

 

書面が届いた日から1週間後、主人から先生宛に以下のような内容が書かれた書面が届きました。さすがに仕事もありますから離婚調停になるのは避けたいという気持ちと、浮気相手の出産が3カ月後ということもあり、子どもが産まれる前に決着をつけたいという気持ちが出ている内容でした。

 

「3か月後には現在の妻・●●との間に子どもが生まれる予定ですが、元妻より慰謝料の請求をされたことで●●は体調を崩しており、医師からはそのストレスが原因で早産になる可能性もあると言われています。そのため、産前産後の育児休暇だけを取るつもりだった妻も退職せざるを得ない状況となっています。私も仕事を早退したり、妻に付き添って病院へ行くために休むことが多くなり、給料が以前よりも少なくなっています。

このような状況の中、元妻が要求する額の慰謝料、私と妻の分を合わせると400万円となります。また、私が家を出る際に解約した定期預金の半分にあたる150万円を合わせて550万円を支払う能力は、お恥ずかしながらありません。

ただし、離婚に至る流れとしては私の一方的な理由によるところが大きいため、できれば元妻の要求を聞き入れたいという気持ちはあります。しかし、先日もお話したとおり現在用意できるのは300万円までとなります。もしも元妻の要求とおり550万円ということであれば、差額の250万円は毎月2万円を養育費にプラスして支払うということではいかがでしょうか。

なお、養育費については離婚しても父親としての責任ですから、子どもたちが成人するまでお支払することに意義はありません。ただし、金額面ですが月額10万円は今の我が家の状況からすると難しいのです。前述したように元妻からの慰謝料の要求で体調を崩した妻が退職したこともあり、今後の収入に関しては不安定な要素が多いためです。ですので、元妻や2人の子どものことを考え最大限がんばって月額5万円でしたら、成人するまで滞りなく支払えるようお約束できると思います。できましたら、このような状態を長引かせることはお互いにとって良いこととは言えませんので、来月いっぱいまでには一件落着となるよう●●先生からも元妻へよろしくお伝えください」

 

250万円を毎月2万円の分割払いと言ってきた主人。しかも、2人の子どもに対する養育費は月に5万円が限度だと言います。書面の口調こそ丁寧でしたが、とても誠意が感じられる内容ではありません。しかも、私のせいで相手の女性が体調を崩して仕事を辞めたとは言いがかり以外の何物でもありません。

 

先生に「どうしますか?」と聞かれましたが、自分たちだけのうのうと暮らすつもりかという気持ちが強くなり、断固、こちらの要求する金額を支払ってもらいたいと答えたところ、先生からはそれならば離婚調停にしましょうと言われました。定期預金を勝手に解約したことやすでに浮気相手との生活をスタートさせていること、以前に私が私立探偵に頼んだ素行調査の報告書など証拠は揃っていました。

 

先生から調停の流れを説明してもらいましたが、通常、月に1回の割合で調停を行うため、それなりの期間がかかると言われました。また、相手が設定された調停をキャンセルしたりすると、さらに長引くこともあると聞かされました。

 

案の定、第1回目の調停当日、主人は体調不良を理由にドタキャンしてきました。仕方なく私だけの聞き取りをしてもらい帰ってきました。しかし、主人は仕事の都合がつかないなどを理由に、結局、次回の調停日時は2カ月後となりました。

 

調停では、私からは慰謝料として主人と浮気相手より200万円ずつ計400万円、主人が勝手に解約した定期預金の半分150万円、月に10万円の養育費を要求しました。それに対し、主人は定期預金の半分150万円、慰謝料として二人からの金額を合算して150万円、もしくは300万円であれば毎月2万円の分割払い、月に5万円の養育費を主張していました。

 

主人にとっては初めての調停になりますが、私にとっては2回目の調停を迎えました。今回は主人も出向いてきました。調停が始まる前、慰謝料を相手の女性にも要求するよりも、金額は400万円にして主人にだけ請求したほうが、相手の女性の気持ちを考えると合意を得やすいだろうと先生からアドバイスがありました。私はそのアドバイスとおりに調停で話をしました。

 

結局、その日は合意には至らなかったものの、3回目の調停で主人は400万円の慰謝料を支払うことを承諾しました。ただし、養育費に関しては月に10万円は難しいので5万円にしてほしいと言ってきました。その代り、定期の150万円分を月に5万円の分割にするので、養育費5万円と合わせると月に10万円の支払いで勘弁してほしいと調停委員の前で泣いたそうです。これが今の自分の精いっぱいの気持ちだと涙を見せる主人に、調停委員の方も同情していたようです。

 

弁護士の先生からも、「下手に長引かせるよりも、この辺で妥協したほうがあなたのためにも良いと思いますよ」と言われ、私はこの金額で妥協することを調停委員へ伝えました。

 

調停証書を作成するにあたり、先生からは「同席されますか?」と聞かれましたが、やはり主人とは顔を会わせたくないため、先生に一任しました。

 

私はもっと簡単に離婚できるだろうと考えていました。主人から離婚を切り出していたわけですし、主人の浮気が原因なのですから、私に対して慰謝料を払うのは当然だと考えていました。

 

一時は「もしかしたら慰謝料や養育費が本当にもらえないのでは?」という不安が生まれましたが、何とか弁護士の先生の力を借り、ほぼ自分の要求とおりの金額で決着しました。やはり友人のアドバイスとおり、自分一人ではとても希望とおりの慰謝料などを取れなかっただろうと思います。

 

ただ、正式に離婚が成立したものの、養育費をもらう代わりに月に1度を限度に、主人が希望すれば子どもに会わせるという条件が、結構、私の中のストレスとなりました。

 

これについては、離婚した友人から、養育費をもらったのはいいけど、定期的に父親である元夫に会わせなければならないのが苦痛だと聞いたことがあり、私も同じ思いがふつふつとわいてきました。

 

離婚に至るまでの主人のやり方は、決して正当的だとは思えません。まして、家を出てからは、まだ離婚もしていないのにお給料さえ入れない人です。

 

そんな人が父親として会う権利を主張するなんて、私からすれば納得できませんでした。いくら養育費を払うからとはいえ、大切な子どもに会わせるなんて苦痛以外の何物でもないと思いました。父親気取りされるのも嫌でした。しかし、現実を考えればやはり5万円でも養育費をもらうことで、子どもたちの将来のための貯金もできます。私は仕方なく自分の感情を押し殺しました。

 

私は相談に乗ってくれた友人にも、一件落着した旨を伝えました。友人は、「私が思っていたより多く取れたんじゃない。良かったね。もう元旦那のことを忘れて、子どもたちのためにも前向きに暮らしな」と励まされました。

 

そして、母が体調を崩していたこともあり、離婚のことをまったく話していなかった両親にも報告をしました。父からは、「こんな大事なことを相談しないとはけしからん」と一喝されましたが、母は「大変だったね。一人で辛かったろう」と言われ、思わず一緒に泣いてしまいました。

 

現在、私は実家である両親の家に2人の子どもを連れて戻っています。下の子が幼稚園に入ったら、パートで働くつもりでいます。一喝した父は、2人の孫の面倒をよく見てくれ、自分のことを「じーじ」と呼んで孫バカぶりを発揮しています。

 

あれから半年。精神的にもやっと穏やかな気持ちになっています。いろいろありましたが、友人や弁護士の先生に助けていただいたことは感謝でいっぱいです。あの時、ひとりで悩んで泣き寝入りしなくてよかったとつくづく思っています。

 

結婚するときには、まさかこんな事態になるとは想像もしていませんでしたが、このことによって自立する一歩を踏み出せたような気がします。もしも私に娘がいたら、こんな経験はさせたくありませんが、やはり女性もいざという時のために自立していることは大切だなとつくづく思いました。

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