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離婚にまつわるコラム

離婚と養育費で泥沼に

今から15年前、まだ小さかった子どもを2人連れて28才で離婚を経験しました。直接の離婚の原因は、元夫の浮気。でも決して浮気を認めることはなく、あくまで私の落ち度を責め、「できるだけ早く離婚したい。離婚するなら養育費は払う。応じなければ、今後一切生活費は渡さない」という、半ば無理矢理の離婚でした。

 

私の父親は早く亡くなっており、母親や姉妹は困惑するばかりで相談できるような相手もいませんでした。その反面、元夫の周囲には離婚経験者が多く、いろいろと有利に運ぶアドバイスをもらっていたようでした。そのことを思い返すと悔しい気持ちもあるので、離婚前にきちんと話を聞いてくれる法務経験者に相談できる機会があればよかったな、と思います。

私が結婚したのは24才のとき。大学卒業後、出版社でアルバイトしていた私は、あるイベントで10才年上の雑誌編集をしていた夫と出会いました。夫は、仕事柄いろいろな土地に取材に出かけていることもあって話が面白く、リーダーシップを取ってぐいぐい人を引っ張っていくタイプ。人脈もあり、世事にも長けていました。それまで大学の同級生など、同世代としか交際したことのなかった私にとって、大人の男性という感じで頼もしく思えたのです。

 

夫も、当時ひとり暮らしをしていた私がいろいろと節約しながら工夫して料理を作っているのを見て、家庭的な女性と思ったようです。年が離れていたので、周囲から冷やかされたり羨ましがられたりすることがあって、目立ちたがりの面のある夫には良かったのかもしれません。1年ほどの交際を経て結婚に至り、入籍してすぐに妊娠。「ゆくゆくは自宅を事務所にして独立するつもりだから、お前も仕事を手伝えばいい」と言われていたので、アルバイトをやめて専業主婦になることに抵抗はありませんでした。夫の仕事は月収が約40万ほどありましたが、家計の管理はすべて夫がしていました。私には月々決まった額だけをくれる形で、私があまり自由にお金を使うことはできないものの、特に不自由のない暮らしだったと思います。口ゲンカ程度はよくありましたが生活はほぼ順調でした。

 

家庭生活がうまくいかなくなってきたと思い始めたのは、2人目の誕生を控えて引っ越しをしてからです。新居は表通りからずっと引っ込んだ狭い路地の奥。子どもがのびのびできるように一戸建ての賃貸に引っ越したのですが、小さい子を連れた妊婦にとっては買い物や交通には不便でした。

 

車で行ける範囲には大きなスーパーがあるので、買い物に連れて行ってほしいと言っても、元夫は「編集の仕事に休みはない」といってすぐに出かけてしまいます。もともと妻は家庭を守るべきという考え方を持っていることもあり、私が外出することをあまり好みませんでした。少しは私も気分転換したいのに……という不満とともに、夫の外出すべてが仕事のためではないということも薄々感じていました。

 

この頃から、お昼過ぎに出かけると夜まで帰宅せず、帰ってからは深夜まで一人で部屋にこもってウィスキーや焼酎を飲み、翌日のお昼頃まで寝ている生活がますます日常的になっていきました。夫の部屋の中はほぼ毎日一升瓶が転がっていて、朝私が起きると居間にまでアルコール臭が漂っている状態。台所の換気扇の下には吸い殻のたまった灰皿が置かれ、周囲にも灰が飛び散っています。2人目が生まれてからもこの生活スタイルは変わらず、食事時間が合わないので子どもたちと一緒にごはんを食べたことは数えるほどしかありません。思えば下の子は、元夫に一度もお風呂に入れてもらったことがありませんでした。

 

そんな折、「仕事に集中したいから離婚したい。仕事をするには家庭が邪魔だ。お前は俺の女房失格だ」と夫から離婚を切り出されたのです。当初は、何を言われているのか意味がわかりませんでした。

 

2人目の子どもが生まれたばかりで専業主婦だった私には、離婚されるほどの落ち度があるとは思えなかったし、夫の仕事が忙しいのはよく理解していたつもりだったからです。ただ、雑誌の編集者という仕事柄、生活が不規則になってしまうのは仕方のないこととはいえ、仕事というよりむしろお酒などで家庭生活をないがしろにしているような気がしたことは事実です。その点は口うるさく責めてしまったかもしれません。それが気に障ったのでしょうか?

 

元夫の言い分は、「お酒を飲んでいる間も次の企画を練ったり、原稿の内容を考えたり、頭の中では仕事をしている。単純に9時から5時までの間、机の前に座っていればいいという仕事ではない。それが理解できずにあれこれ口を出す妻は必要ない」というもので、私にはとても極端に感じられました。

 

それにしても、あまりにも離婚を急いでいる様子があり、親しい友人や夫の両親に相談すると「それは女性がいるのではないか」という疑惑が出てきました。私自身は、まさか…という感じでしたが、夫の行動や様子を考えると思い当たることがいろいろとあったのです。

 

たとえば家族で予定していた沖縄旅行を「仕事で取材が入った」といってキャンセル。しかも行き先は同じ沖縄で、わざわざ「モデルの女性が一緒だけど、誤解するなよ」と断ってから出かけて行ったことがありました(普段、女性モデルなどは使わない仕事です)。その後、取材記事が雑誌に載らないので、いつ掲載になるんだろう?とは思っていました。

 

また、私の誕生日は「昔お世話になった人の娘さんが入院しているからお見舞いに行く。遠方なので泊まりになる」といった感じで、家族や私の記念日などにわざわざ予定を入れている節が見えました。ほかにも、後から考えれば「あの話はおかしい」と思うような理由での外出がいろいろとあったのです。細かく入念にストーリーを作り上げて私を説得し、仕事といつわって誰か私の知らない女性と過ごしていたのかもしれません。

 

恥ずかしい話ですが私は全くそれに気づかず、大きなお腹をかかえて上の子の手を引き、病院に連れて行ったり毎日家事をしたりして過ごしていました。結婚当初から「お前は、お金の管理が苦手だから俺がやる」といって預金などはすべて元夫が管理しており、私には余分なお金は持たされていない状況でしたが、夫はその気になれば時間もお金も自由に使い放題だったと思います。ちょっと嘘をつけば疑うこともなく信じてしまう、世間知らずの年下の妻など、元夫の目にはつまらない専業主婦に映っていたのでしょう。

 

離婚話が持ち上がってから、お酒を飲んだ夫から深夜に執拗に離婚を迫られることが始まり、暴力とまではいかなくても寝ている子の上に突き飛ばされたりすることがあったので、私はひとまず子どもを連れて実家に身を寄せることにしました。

 

実家にも離婚を迫る電話がしつこくかかってきましたが、「いつになったら別れるんだ」「私は別れたくない」とお互いに話し合いになりません。夫は別れるためにいろいろなことを言ってきました。「子どものことは責任を持つから、また同居して結婚生活を続けていこう。でもシングルマザーになれば公的な手当があるから、形だけ離婚届を出して手当を受けられるようにしたらどうか(もちろん違法です)」、「毎月必ず養育費を払うから心配するな」など、なりふり構わず離婚に持っていこうとする話ばかりです。

 

そのうち、夫は養育費の額をかなりつり上げてきました。毎月、2人分の養育費として25万円払うというのです。この金額は、私にとってかなり非現実的なものに思えました。前にも書いた通り、当時の月収は約40万円だったので払えない額ではないのかもしれませんが、これをいつまで払い続けられるつもりなのでしょうか。これからの20年間、夫の収入が確保される保障はないし、残りの金額では突然の出費や病気、怪我などの際に対応できないということはすぐに判断できるはずなのですが。

 

しかし、まだこの時点では私に離婚の意志はありませんでした。養育費の額とは関係なく、もっとよく子どものことを考えてほしい、離婚には応じないということを再三伝えましたが、夫は頭に血が上ったように「一体いくら払えば離婚するんだ」「お前は金に汚い」、「俺がそれだけの金額を払えないと言うのか。バカにしている」などと暴言を吐くのです。電話のたびに夫の暴言を浴びることがストレスになって、精神的にも辛い時期でした。

 

私の父親はすでに亡くなっていて、夫は私の母親のことなど歯牙にもかけず、舐めきっている様子でした。そこで最後の手段と思い、遠方に住む夫の両親に会いに行って相談することにしました。前もって電話でだいたいの状況を伝えていましたが、義両親は「子どもが生まれたばかりなのに離婚するとは何事か」と夫を批判してくれていたので、この離婚を止めてくれることを期待していたのです。義両親に会いに行くことを夫に伝えると、自分も行くと言い出したので、不安を抱えながらも一緒に行くことになりました。

 

義両親に諫められることで夫が考え直してくれるかと期待しましたが、ダメでした。夫はようやく私が離婚に同意し、その報告をしに義両親のもとを訪れたと思いこんでいたようでした。ところが私と義両親が結託して「離婚するべきではない」と説得したことに激怒。自分の親の前でも夫の逆上ぶりはものすごく、私のことを「こいつは女房失格」と言って、今までの生活の中であった私の落ち度(掃除が下手、だらしない、経済観念がない…等)を大声であげつらうのです。口汚く私を罵る怒鳴り声を、義両親とともに身をすくめて聞かなくてはならない辛さは例えようがありませんでした。

 

夫は怒りにまかせて一人で帰ってしまい、後に残された私は呆然とするだけでした。義両親は、もう少し落ち着いた頃に改めて説得するから……と言ってくれましたが、夫に対する私の気持ちは完全に冷めていました。

 

身勝手な理由で、まだ生まれたばかりの子どものいる家庭より離婚を選ぶ男。私より10も年上の男が高齢の両親に怒鳴り散らし、足音を荒げて出て行く姿を見て、もうこれ以上一緒にはやっていけないと感じてしまったのです。 そして、夫からついに「今すぐ離婚に応じなければ今後一切生活費は出さない」という通告が言い渡されました。この頃には私も夫への不信感と悔しい気持ちが高まっていて、関係の修復は難しいとわかっていました。でも、子どもたちが父親を失ってしまっていいのだろうか。私が我慢してもう少し説得すれば、いつか元通りの家庭になるのではないか……。離婚するということの重さと、子どもたちから父親を奪ってしまう罪悪感でなかなか踏ん切りがつきません。もう夫の気持ちは戻らないのはわかっていました。いずれ離婚しかないだろうと思ってはいても、夜になるとすぐそばで眠っている子どもの寝顔を見ながら涙がこぼれました。

 

私がどうしても気になったのは、やはり養育費の額についてでした。離婚するなら多くもらえた方がいいに決まっているけど、最初から無理な金額を口約束しておいてあっさり破られるのではたまりません。それまでたいした仕事の経験もなく、乳児を抱える私がすぐに安定した職業に就けるとは限らないし、生活の基盤は絶対に確保したいと思いました。それに、夫からひどい言葉と態度で傷つけられた悔しさは消えません。その代償としても、絶対に取れるだけは取ってやりたいという強い気持ちもありました。

 

やっと離婚を覚悟した私は、夫に条件を出しました。「そちらの申し出通り、養育費は月々25万円と決めること。その内容で公正証書を作ること」。

 

公正証書は、遺言や金銭の貸し借りに対する公的な証明書となるものです。養育費や慰謝料の支払いに関するものでも作成することができると知り、藁をもすがる気持ちでいろいろと調べました。公証人が法律に従って作成するものなので、その内容には高い証明力があるとされ、法的な力を持つことができます。月々25万円もの養育費を払うという約束も、公正証書を作っておけば単なる口約束では済まなくなります。もし支払いが滞れば、すぐに強制執行(相手の給料を差し押さえるなど)の手続きが取れるというのも、私にとっては心強いものでした。公正証書以外にももっと良い方法があったかもしれませんが、ほとんど法律の知識がない私には他の方法が考えつかなかったのです。

 

公正証書を作成するという案に、当然ながら夫はいい顔をしませんでした。「きちんと払うから無駄だ」と言っていましたが、私が譲らなかったのでしぶしぶ公証人役場へ来てくれました。公証人には、「養育費の取り決めで公正証書を作成するのは珍しい」と言われたりしましたが、慣れない法律の手続きをなんとかやり終え、無事に公正証書が作成されました。それ相応の手数料がかかりましたが、夫はもちろん知らん顔。当然、私が支払いをしました。私の手にはずっしり重たく思えた公正証書。これに今後の、私たち親子3人の生活がかかっているような気がしました。

 

場所を喫茶店に変えて、次はいよいよ離婚届を書く番です。夫から差し出された離婚届には、ほとんどの項目がすでに書き込まれていました。離婚の証人の欄には、私もよく知っている夫の会社の上司と同僚の名前がすでに並んでいます。あとは私が署名するぐらいで終わってしまう離婚届を眺めながら、「ずいぶん前から離婚の用意を進めていたんだろうな」と思いました。

 

離婚届に署名し印鑑を押すと、私の手元をじっと見ていた夫の顔に安心したような嬉しそうな表情が浮かびました。私の気が変わらないうちに、と言わんばかりにいそいそと離婚届をバッグにしまう姿には、もう幻滅しか感じられません。その離婚届を提出しに夫は市役所へ行き、私はすぐに子どもたちが待つ実家へと向かいました。駅に向かって歩きながら、不安はもちろんありましたが、なんだかすっきりした気持ちになっていたことを覚えています。

 

それからしばらくは新たなシングルマザー生活を軌道に乗せるために無我夢中でした。格安のアパートを探し、2人目の子どもが1才になるまでを目安に、しばらくは夫からの養育費を頼りに専業主婦生活を続行。1才になった頃から職探しを始めましたが、なかなかうまく仕事は見つかりませんでした。

 

その期間にも元夫からはたびたび連絡があって、何度か子どもたちの顔を見に来たことがあります。私の方は、養育費をもらっているのだから仕方ない……という気持ちでしたが、元夫はあっさりと悪びれもせずに訪れるのです。時には私の車を貸してほしいと言ってきて、ガソリンは空っぽで返してきたり。また、交際している女性が複数いるのだけど、どの女性がいいと思うかと聞いてきたり。「俺たちはなにも憎み合って別れた訳じゃないから」という言葉が飛び出てきたときには、返す言葉を失いました。離婚してから半年と経っていないのに、あの泥仕合をすっかり忘れているのでしょうか? 離婚してから解りましたが、元夫は都合のいい現実の中で生きているタイプなのかもしれません。

 

月々25万円の養育費が順調に支払われて、約1年間。私はなんとか職を見つけ、子どもたちが保育園に入ることができて少しほっとした頃、元夫から「再婚する」という連絡がありました。すでに離婚した相手がどんな女性と再婚しようが勝手なのですが、家庭が邪魔だからという理由を押し切って離婚したくせに、またすぐ家庭を持つのかぁ、という思いはありました。相手はお子さんのいる女性で、そのお子さんと養子縁組したということ。また、お子さんは私立の学校に通っているとのこと。ちらりと「うちの養育費の支払いは大丈夫なのか」と思いましたが、口を挟む立場ではありません。今まで通り、きちんと責任を果たしてくれるよう祈るだけでした。

 

元夫からの結婚報告から数ヶ月後、「今月の支払いは少し遅れる」と連絡がありました。心配したように、いよいよ支払いが滞るようになってきたのか……と思いましたが、私には公正証書があります。いざとなったら強制執行もできるのだから、と思えば余裕がありました。そしてその翌月は「今月は15万しか払えない」また次の月は「10万だけ」「もう少し待ってほしい」と、どんどん支払いは遅れ、その金額もかなり目減りしてきたのです。

 

累計で50万円以上も養育費の支払いが滞り、一度きちんと話し合いの場を持たなくてはと思っていた矢先、見慣れない封書が届きました。家庭裁判所からの呼び出し状です。目を疑いながら中を確認すると、養育費の減額について、私が元夫から訴訟を申し立てられているという内容でした。元夫に連絡を取ると、不況で収入が減ったことと、再婚したから生活費がかかるということをあっさり認めました。その上、「今の養育費は高額すぎる」「平均では月に5万程度のはずだ」などと言って、離婚のときにあれほど払うと言い張ったことも忘れているかのような口振りなのです。「お互い、言いたいことは調停で」と言われ、このままではまた元夫の思い通りにされてしまう、という不安にかられました。

 

その時の私の収入は、月に12万程度がやっと。養育費が減額されるのは仕方ないとしても、その金額によってはすぐに生活が立ちゆかなくなってしまいます。父親はすでに亡くなっており、法律に詳しい知人の当てもなし。まだ3才と1才になったばかりの子どもを抱えて、海千山千の編集者である元夫と渡り合うなんて、とても無理! 目の前が真っ暗になりそうでした。

 

それでも離婚当時の悔しかった思いが蘇り、このまま元夫の好き放題にはさせたくないと気持ちが奮い立ちました。第一回目の調停の前に、自分と子どもの生活を守るため、できるだけのことをやろうと思ったのです。

 

まず私が頼ったのは、市役所で実施している法律無料相談。ボランティアで弁護士が相談に乗ってくれるシステムです。その中でも「女性のための法律相談」という日に仕事の休みを合わせて予約を取りました。

 

私の相談に現れた弁護士は、やや年配の貫禄のある、悪く言えばふんぞり返った雰囲気の男性でした。私は、離婚のいきさつから養育費の取り決め、公正証書のことなど細かくメモをして、養育費を減額されないよう主張するにはどうしたらいいかと相談したのですが、「別れた旦那さんの親に遺言書いてもらえばいいじゃない」という、びっくりするような回答が返ってきました。養育費は減額されても、遺言で孫に遺産を残してもらえば問題ないでしょうというのです。養育費とは違う問題だし、とてもそんなことはできないと言っても聞く耳を持ってくれず、わずか7分(悔しいので時間を見ていました)で終了。

 

弁護士の無料相談とはこんなものなのか……と失望しましたが、調停で不利にならないように対策を練っておきたいので、急いで他に相談できるところを探しました。

 

先日の弁護士は無料だったからいい加減だったのかもしれないと思って、今度はきちんと有料の相談を選びました。マスコミでも有名な、女性の離婚カウンセラーの事務所です。まずここは有料の電話相談があったので、前もって数千円ほどのお金を振り込み、予約の時間に電話を入れました。

 

ここの電話相談は、担当カウンセラーが離婚のいきさつについてじっくり詳しく話を聞いてくれたので、誰かに聞いてほしかった思いや不安を吐き出すことはできました。ただ、最も相談したい養育費のことについては明確な回答がもらえないのです。「そういった相談はやはり弁護士でないと。別料金になりますが、事務所に来てもらえば弁護士の紹介もできます」と言われ、改めて事務所へ行って相談する予約を取りました。

 

予約の日に離婚カウンセラーの事務所へ行くと、先日電話を受けてくれた男性カウンセラーが待っていました。しかし改めて話し合うまでもなく、カウンセラーは電話のときと全く同じ内容の話を、最初から繰り返すだけなのです。「その話はすでにしているので、今日は弁護士を紹介してほしい」と切り出すと、弁護士の紹介には別に紹介料がかかると言います。その金額はたしか、数十万単位でした。そんな金額を出して弁護士を紹介してもらうつもりは最初からなかったので、電話での話が違うともめていると、この事務所代表の女性カウンセラーが顔を出しました。
「離婚した女性は心にかかえているものがいろいろあるから、そういった悩みや不安で泣き出したりする人もいる。その状態で弁護士を紹介するわけにはいかないから、悩みを吐き出す場としてこの事務所のカウンセラーがまず話を聞いているんですよ」とのこと。そして、何ひとつ得るものがなかったのに、相談料として1万円以上の料金をしっかり取られました。

 

ここまで料金を払って私が学んだのは、「誰でもいいのではなく、きちんと法律の知識を持った人に相談しなくては無駄になる」ということだけ。一体、誰に相談すればいいんだろう……。インターネットで信頼できそうな組織や機関を調べた中で、弁護士会の有料相談にたどり着きました。

 

おそるおそる予約を入れて相談に行くと、調停ではこういったポイントで自分の実状を話すとよい等、弁護士が簡潔に要点をまとめてわかりやすくアドバイスをくれました。やっと納得のいく情報がもらえてほっとしたのを覚えています。その前に行った無料相談や離婚カウンセラーでの失敗を話すと、「おかしな所ばかりに当たったんですね」と苦笑されました。30分5000円の料金は妥当だったと思います。

 

実際の調停は、なかなかスムーズには進みませんでした。月に1度、家庭裁判所に赴き、夫と私がそれぞれ別々に調停員の前で自分の実状を話します。私は、養育費の額は離婚の際に相手側からの申し出によるものであり、その金額で公正証書も作ってあること。また、2人の幼児を育てながら仕事をしており、収入が不安定なので養育費はなるべく削ってほしくないことを訴えました。しかし調停員はあくまで中立な立場を取っており、私には同情する話し方をしてくれますが、決して味方になってくれるわけではないのです。

 

元夫の方は、再婚したため生活費がかかるようになり、約束した養育費は払えないの一点張り。調停員が「いくらなら払えるのか」と聞いても、決して明らかな金額を言わないというのです。これには調停員も困っていたようですが、はっきりした金額を言わないのは、私の方が根負けするのを待っているとしか思えません。また、私たちの場合は調停の間、養育費の支払いは停止していました。公正証書の効力で元夫の給与を差し押さえようにも、当時の元夫は独立してフリーの編集者という立場だったため、給与(報酬)を振り込む取引先が複数ありました。そのため、差し押さえができないという事情もあったのです。私は元夫のずるい面をまた見せつけられて嫌な気分でした。

 

調停は半年以上続き、養育費が必要だという証明のために私の月間の収支を提出させられたり、お互いへの不満を調停員にぶつけたりという経過があって、ようやく決着がつきました。改めて決定した養育費の額は12万円。2人分の養育費としては高い方かもしれませんが、私にとっては「半分以下に減らされた」という悔しさと「この金額までは守った」という達成感が半々です。この調停の後は支払いが遅れることもなく、10年以上支払われていることを考えれば、結果的にはまあ良かったと言えるのかもしれません。

 

子どもたちはもう高校生になり、すっかり大人っぽくなりました。今でも父親は年に何回か会いに来ます。これも、養育費を払うという責任を果たしているから来られるのでしょう。子どもたちは両親の離婚のいきさつをかなり詳しく知っていますが、父親とも「あんまり話すことがない」と言いながらも、こだわりなく会っています。私自身は、調停で再び泥仕合になったことで元夫の顔はもう2度と見たくないと思いましたが、今はもう、いい意味でどうでもよくなりました。誰かを憎み続けて生きていくのは案外しんどいし、適当なところで「もういいや」と思えて良かったと思います。時間が一番の薬かもしれません。

 

離婚はどんなケースでも、心身ともにすり減ってしまうものだと思います。特に女性は子どもを育てたり、安定した仕事に就くのが難しかったり、離婚によるダメージは大きいはず。私自身の経験から思うのは、少なくとも経済的な支えさえあれば、たいていのことは乗り越えていけるのではないかということです。離婚の相手ともめたくない、お金にこだわるのは卑しい気がする、などの理由で養育費や慰謝料についてまったく取り決めのないまま離婚するのはちょっと待ってほしいと思います。上手に弁護士や法律を利用して、どうぞ自分自身の今後を守っていってください。

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